「IP管理表はあるにはあるんですが、前任者が作ったもので、合ってるかどうか……」。語尾が濁るところまで含めて、ネットワークの現場ではおなじみのやり取りです。

IPアドレスの管理台帳は、社内ITの最も基本的なインフラです。トラブル調査も、機器の入れ替えも、セキュリティの確認も、すべて「何がどこにあるか」が分かって初めて始まります。この記事では、Excelでの作り方と、多くの会社がつまずく「維持」の問題を扱います。

まず作る——最低限の項目

凝ったフォーマットは不要です。次の6項目があれば実用になります。

項目
IPアドレス192.0.2.21
機器名受付プリンタ
種別複合機
設置場所1F 受付
管理者・所有者総務部
備考2025年リース更新

コツは3つあります。

  1. サブネットの全アドレスを行として作る。使っていないIPも「空き」として行を持たせると、新しい機器に割り当てるとき衝突しません。
  2. 固定IPとDHCPの範囲を分けて明記する。「どこからどこまでは自動割当」と書いておくだけで混乱が減ります。
  3. 分からない機器は「不明」と書く。空欄のまま放置するより、「不明と分かっている」ほうがずっと価値があります。

限界——Excel台帳は、なぜ必ず古くなるのか

問題は作った後です。Excel台帳の維持には、次の構造的な弱点があります。

  • 変更が台帳を経由しない。機器の追加・撤去・入れ替えは現場で起き、台帳の更新はあとまわしになる
  • 書いた内容を検証する手段がない。表に「複合機」と書いてあっても、いまそのIPで動いている機器が本当に複合機かは、表からは分からない
  • 無断で増える機器を検出できない。持ち込みPCや新しいWi-Fi機器がつながっても、台帳は教えてくれない

その結果、多くの台帳は数ヶ月〜1年で「実態と合っているか分からない表」になります。そして怖いのはここからで、信頼できない台帳は、トラブル調査の場面でむしろ人を誤誘導します。プリンタが急に印刷できなくなったとき、台帳に書いたIPと実機のIPがずれていないかを疑えるかは、その典型的な分かれ目です。

台帳を「正本」であり続けさせる方法

答えはシンプルで、表と実態を定期的に突き合わせることです。ネットワークを実際に観測し、「いま応答しているIPと機器」の一覧を取り、台帳との差分を見る。手作業でやるなら、pingスキャンやARPテーブルの確認を月に一度行い、差分を台帳に反映します。この3つをどう組み合わせると漏れが減るかは、LAN上の機器を洗い出す手順で個別に扱っています。

ただし、これを人手で続けるのは相応の負担です。忙しい月に一度飛ばすと次からやらなくなり、台帳作りと同じ道をたどりがちです。担当者が一人の会社では、この負担がまるごとその人に乗ります

「育つ台帳」という設計

私たちが開発しているAI情シスは、この突き合わせ自体を仕組みにしています。

  • 設定したサブネットからIP台帳を生成し、PingとARPの定期観測で「いま使われているIP」を把握
  • MACアドレスの公開登録情報から推定メーカーを表示(「表には複合機とあるが、観測上はPCメーカーの機器」といった食い違いに気づける)
  • 新規出現・未検出・再出現・IPとMACの対応変化を差分イベントとして記録し、人が「既知の機器」「確認中」を判断
  • 機器名・所有者・設置場所・重要度といった人にしか分からない情報は、人が編集し、観測が勝手に上書きしない

つまり、機械の観測が「実態」を持ち、人が「意味」を与える。両者を突き合わせた状態が常に維持されるので、台帳が古くなりません。IP帯を盤面のように見渡せる画面で、空き・使用中・確認待ち・未検出が一目で分かるようにしています。

AI情シスは、企業ごとに個別カスタマイズして提供する製品です。導入はPoCからご相談いただけます。端末台帳の詳細は機能紹介をご覧ください。

まとめ

IP管理台帳は、まずExcelで作ることに十分な価値があります。ただし本当の勝負は維持です。「作った表」と「実際のネットワーク」を突き合わせる手段を持たない台帳は、時間とともに必ず実態から離れます。人手で続けられないなら、観測で育てる仕組みを検討してみてください。