社員数十名の会社に、IT担当がひとり。サーバーもネットワークもPCのキッティングも、ヘルプデスクも全部その人。いわゆる「ひとり情シス」は、多くの中小企業の現実です。

そして、ひとり情シス体制の会社と話すと、経営側も本人も、たいてい同じ不安を口にします。「この人(自分)がいなくなったら、どうなるんだろう」

本当のリスクは「忙しさ」ではない

ひとり情シスの議論は業務量に目が行きがちですが、より深刻なのは属人化です。具体的には、次のようなものが「その人の頭の中」だけにある状態です。

  • ネットワーク構成——どの機器がどこにあり、どうつながっているか
  • 機器の管理情報——ルーターやNASの設定内容、管理パスワードの在り処
  • 障害対応の勘所——「あのプリンタは電源を入れ直せば直る」「この症状のときはまずDNSを疑う」
  • 過去の経緯——なぜこの構成になっているのか、どの業者に何を頼んだか

これらは日常業務が回っている限り表面化しません。表面化するのは、退職・休職・急病といった、最も余裕のないタイミングです。

引き継ぎ資料では、なぜ足りないのか

「辞めるまでに資料を書いてもらえば大丈夫」と考えたくなりますが、実務では2つの壁があります。

第一に、本人が重要だと自覚していることしか書けないこと。長年の担当者ほど「当たり前すぎて書くまでもない」知識が多く、それこそが後任を最も苦しめます。「サーバー室の左のスイッチは触ると不安定になる」といった知識は、資料には残りません。

第二に、資料は書いた瞬間から古くなること。構成図やIP一覧を渡されても、その後の変更が反映されなければ、数ヶ月で「信じていいか分からない資料」になります。信じていいか分からない資料は、無いのとあまり変わりません。

対策の方向性——「人に残す」から「仕組みに残す」へ

属人化対策の本質は、増員でも根性の文書化でもなく、会社のIT環境の状態と履歴が、人と独立して記録され続ける仕組みを平時から回すことです。そもそも増員という選択肢は、募集しても応募が来ないという前提の前で止まることが多く、そこを当てにした計画は立ちません。具体的には次の3点です。

1. 構成の正本を、実測で維持する

構成図やIP台帳を「人が思い出して書く資料」ではなく、「ネットワークを実際に観測した結果」として維持します。実測ベースなら、担当者の記憶に依存せず、更新漏れも起きにくくなります。Excel台帳が数ヶ月で実態と合わなくなる仕組みを知っておくと、この差は分かりやすくなります。

2. 対応の履歴を、事件簿として残す

障害のたびに、症状・調べたこと・原因・対処を1件ずつ記録します。これは後任への最高の引き継ぎ資料であると同時に、現任者自身の「二度目からは早く直せる」資産になります。

3. 相談できる外部の技術者を持つ

すべてを内製で抱えず、手に負えない障害を引き継げる外部の専門家を平時から確保しておきます。重要なのは、障害のときに初めて説明するのではなく、環境の記録を共有した状態で相談できることです。委託先を探す段階では、対応の記録が自社と業者のどちらに残るかを最初に見ます。

AI情シスが目指しているもの

私たちが開発しているAI情シスは、この3点を一つのサービスとして提供しようとしています。LANの継続観測で端末台帳が実測ベースで育ち、障害のたびに調査票という形で記録が残り、必要なら弊社のネットワークエンジニアが同じ調査票を見ながら対応を引き継ぐ。そういう設計です。

ひとり情シスの会社であれば、担当者の頭の中にしかなかった「構成」と「対応履歴」が、本人が意識しなくても記録として蓄積されていく状態を作れます。それは会社のリスク対策であると同時に、担当者本人を「いなくなれない人」という重圧から解放することでもあると考えています。

AI情シスは、企業ごとに個別カスタマイズして提供する製品です。導入はPoCからご相談いただけます。機能の詳細開発状況を公開していますので、体制に不安のある方はぜひ一度ご覧ください。

まとめ

ひとり情シス体制で行き詰まるのは、担当者の能力や努力が足りないからではありません。構造がそうさせています。「その人しか知らない」を減らす仕組みとは、実測で維持される台帳、自然に貯まる対応履歴、記録を共有した外部の相談先の3つです。これを平時から回しておくことが、会社にとっても担当者にとっても、いちばん現実的な保険になります。