IT人材不足は、統計の話である前に、採用現場の話です。中小企業でよく聞くのは「IT担当を募集しても、応募が来ない」「来ても、提示できる給与で折り合わない」という二つの声で、どちらも数字を見る前から起きています。
経済産業省の調査が指摘するまでもなく、IT人材の需給ギャップは拡大傾向にあり、待遇・キャリアパス・技術環境で選べる立場のエンジニアは、どうしても大企業やIT企業に集まります。この記事は「それでも頑張って採用しよう」という話ではありません。採れないことを前提に、どう回すかの話です。
「IT担当の仕事」を分解してみる
社内ITの仕事はひとまとめに語られがちですが、分解すると性質の違う仕事の集合です。
- 判断が必要な仕事——投資の意思決定、業務に合わせたシステム選定、トラブル時の対応判断、ベンダーとの交渉
- 知識があれば決まる仕事——設定作業、キッティング、アカウント管理
- 見て・記録する仕事——機器の状態把握、台帳の維持、障害の記録、ライセンスや資産の棚卸し
採用が難しいとき、多くの会社は3つすべてをこなせる人を探します。しかし本当に社内に必要なのは1つ目の「判断」であり、2つ目は外部の専門家に、3つ目は仕組みに任せられます。
優先順位1: 「見て・記録する仕事」を仕組みに寄せる
3つ目の領域は、人手でやると最も時間を食い、最も属人化し、最も採用で解決しにくい仕事です。同時に、ここが仕組み化に一番向いています。
- 何がLANにつながっているかは、ネットワークの継続観測で台帳として維持できる
- 機器や回線の状態は、継続測定で「普段どおりか」を記録できる
- 障害の経過は、決まった置き場(調査票・チケット)を作れば自然に貯まる
この領域が仕組みに乗ると、兼任担当者の負荷が下がるだけでなく、会社のIT状況が「人の頭の中」から「記録」に移ります。これが次の段階の土台になります。ただし、Excelの台帳が数ヶ月で実態から離れていくように、置き場を作っただけでは仕組みになりません。維持まで含めて自動で回ることが条件です。
優先順位2: 「知識があれば決まる仕事」は外部と分業する
設定作業や障害の技術調査は、常勤の担当者を雇うより、必要なときに専門家へ頼むほうが合理的な場面が多い領域です。ポイントは、優先順位1で作った記録を共有できる状態で頼むこと。台帳と履歴がある会社への支援は速く、都度説明が必要な会社への支援は遅く高くつきます。どの型の事業者に頼むかで得意領域も変わるため、対応範囲・初動・記録の残り方をどう確認するかは先に押さえておきたい部分です。
優先順位3: 「判断」だけは社内に残す
何にお金を使うか、どの業務をITで変えるか、障害時に業務をどう継続するか。こうした判断は外部に委ねられません。逆に言えば、1と2が整理できていれば、社内に必要なのは「フルタイムのIT技術者」ではなく、「判断できる担当者」です。総務や経営企画の兼任でも、記録と専門家の支えがあれば十分に機能します。専任がいない会社がまず決めておく3つは、この「判断できる担当者」が動くための土台にあたります。
この分業を、ひとつのサービスにする試み
私たちが開発しているAI情シスは、この記事の優先順位1と2を一続きに提供する設計です。LANの継続観測で端末台帳と品質記録が育ち(=見て・記録する仕事の仕組み化)、異常時には発生前後の記録が証拠として整理され、必要ならネットワーク構築を本業とする弊社エンジニアが調査を引き継ぎます(=専門家との分業)。対応の記録は調査票としてお客様側に残るので、将来採用が実現したときも、外部委託を変えるときも、蓄積は無駄になりません。
企業ごとに個別カスタマイズして提供する製品です。導入はPoCからご相談いただけます。製品の仕組みと料金プランの構想を公開しています。
まとめ
IT人材が採れないのは、多くの中小企業にとって当面変わらない前提条件です。であれば、「全部できる人」を探し続けるより、仕事を分解して再配置するほうが早い。見る・記録するは仕組みへ、技術作業は外部へ、判断は社内へ。人材不足は採用の問題であると同時に、体制設計の問題でもあります。